ISBN:4840234329 文庫 岩田 洋季 メディアワークス 2006/05 ¥683
ジャンルは……なんだろ。とりあえず身も蓋もない言い方をすれば天才画家国崎桜花の絵がいかに素晴らしいかを書いた話です。作者は「灰色のアイリス」「護くんに女神の祝福を!」を書いた人ですが、こういう落ち着いた話も書けるんですね。筆の可能性が広がるのは良いことです。
これは小説だからこそ書けた話といえるでしょうか。ヒロインは色盲でありながらも、想像の中では彼女だけが思い描いている色があり、それをキャンパスに描き出すことで今までにないような色を用いた様々な絵が出来るわけですが、小説という媒体により読者が想像できる今までにない色を使った最高の絵が脳内で想像できるのです。
こういう話にこそイラストはいらない気が。
8.5/10
妹の小夜子が事故でこの世を去った八月十五日は、アブラゼミがうるさく、怖いくらいに日没が赤い、まるで世界が焼かれていくような夕方だった。
そして、五年後の小夜子の命日。同じように夕陽で赤い空を、雲がせわしなく流れていく。周囲がアブラゼミの鳴き声に包まれる。なにか、予感めいたものがあった。驚くほど暗く、常にざわざわと不穏な音を奏でる森の中、上りかけた月の光が優しく降り注ぐその下に、小柄で美しい少女は座っていた。
「――あなたは……だれなの?」
少女の声質は小夜子と似ていた――。日没になると必ず眠る少女国崎桜花は、決して小夜子の代わりではなくて――。
ジャンルは……なんだろ。とりあえず身も蓋もない言い方をすれば天才画家国崎桜花の絵がいかに素晴らしいかを書いた話です。作者は「灰色のアイリス」「護くんに女神の祝福を!」を書いた人ですが、こういう落ち着いた話も書けるんですね。筆の可能性が広がるのは良いことです。
これは小説だからこそ書けた話といえるでしょうか。ヒロインは色盲でありながらも、想像の中では彼女だけが思い描いている色があり、それをキャンパスに描き出すことで今までにないような色を用いた様々な絵が出来るわけですが、小説という媒体により読者が想像できる今までにない色を使った最高の絵が脳内で想像できるのです。
こういう話にこそイラストはいらない気が。
8.5/10
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